雑談

生まれてきたわけ

君たちは皆、空から降りて来た。
そしてもう一度ふれたい絆を求めてこの世に生を受けたのだ。
空に居た頃は、これまでの何十何百何万回と繰り返し生まれ変わった全ての記憶を憶えている。
前の君は犬だったかもしれない、蝶だったかもしれない、花として生まれたこともある。
ほとんどの場合、昔の記憶は真っ白に消えてしまっていることだろう。でも、ふとした瞬間、初めて見る街並みを見て懐かしい気持ちになったり、突然なぜか泣きたい気持ちなったり、喜びの気持ちが込み上げたりするのはその記憶の欠片が残っているのかもしれない。

またある時君は何処かの異国の地で、お姫様であったり、誰かのために戦った勇者であったり、何かを求めて世界をさまよい歩いた旅人だったのかもしれない。
数々の想いの中で、愛された記憶、愛した喜び、そんな大切な場所を探して、君は命を咲かせたのだ。
いつか再び出会うためのかけがえのない繋がりを求めて。

今の君はどう感じているだろうか?
生まれた意味を「望んで生まれたわけじゃない」と否定するかもしれない。

そんなときはこう考えてほしい、親は子どもを選んで産んだりはできないのだ。
その親も、そのまた親も、はるか遠いその親も君と同じ道を歩んできたことを思ってほしい。
そして気の遠くなるくらいの確率の中で君が命を授かったのだということを。

今回の君は、お母さんを望んだかもしれないし、お父さんを探したのかもしれない、もしかしたら兄弟を選んだのかもしれない。
前に生まれたときは、君の母は自分の愛しい子だったかもしれない。父はかつて愛したお嫁さんだったかもしれない。様々な出会いや別れを経験した命の繰り返しの中で、それはきっと尊い何かの縁という絆で結ばれていたのだろう。

生きていること、それは空からこの世界を覗き自分で何かを選んで降りてきたのだ。
同じ空には、また生まれたくてワクワクしている何十何百何万もの君たちが同じように覗いているから、望んだ場所が重なり合い競って目指すことになったかもしれない。その中で君は生を勝ち取り誕生した。

だからどうか君よ、胸を張ってください。
君たちは頑張りこの世に産まれたくて生まれた命なのだから。
それはかけがいのない奇跡な証なのだ。

君が気づかなくとも、いくつもの記憶の中の何かに、そして誰かに再会することだろう。
その全ては等しく巡っているから、そんな君との数えきれない縁の繋がりで何かと引かれ合い、いつかの何処かで偶然を装った必然の中で出会うだろう。
それは何十年も先の話になるかもしれないし、明日の話かもしれない。もしかしたら今繋がっているかもしれないし、悲しいけれど気が付いた時にはすでに終わってしまっているかもしれない。
それは君のお爺さんやお婆さん、親や兄弟、友や恋人、愛しいペットとして訪れるかもしれない。
君に関わる様々なものが色んな形をとって君と巡り会うのだろう。もしかすると昨日、電車のホームの反対側や、交差点ですれ違っているのかもしれない。あした道の傍らで、そっと咲く一輪の花として君の前に佇んでいるかもしれない。

たとえその出会いが短くさよならをする運命だとしても、そこに何かしらの縁があったのかもしれない。
何度出会っても別れる運命すらそこにはあるのかもしれない。
そう想いを巡らせると、世界はとても儚く繊細で愛おしい存在であることに気づかされる。

そしてその縁の繋がりに終わりはない。
それはこれまで命が紡いだ何十何百何万と数えきれない関わりが、君というきっかけを待っているから。
また、君が生きている限り、そこに新たな一つを刻む絆が生まれる可能性が無限に存在している。

今の君はとても不遇で不満だらけで涙を流しているかもしれない。
しかし、何かを傷つけたり、欺いたり、おとしめたり、心無い噂で疑ったりと、君がされて悲しいことは、誰もがひとしく傷つき悲しく感じることだと分かってください。
君を大切にしてください。そして同じように誰かに優しくしてください。

今は望んだ世界ではないかもしれません。生きていくことに自信が持てないかもしれません。愛された記憶がないと言いうかもしれません。苦難が目の前に立ち塞がっているかもしれません。絶望という名の荷物を背負って動けないかもしれません。
そして今が幸せだと感じているのはほんの一握りかもしれません。

それが重たい荷物なら、時には地面に置いてください。
生きることを頑張ってあきらめなければ、時間や風に任せてみてもいいかもしれない。
幸せには決まった形はなく、ましてや人が決めることでもなく、自分の心の在り様で変化するものだと知ってください。
今の悲しみが、いつかの喜びを作ることもあります。

だからどうか目を凝らしてください。
君という奇跡は、君の周りの奇跡でもあると気づいてください。
幾千万の絆と縁は、円で丸くどこかでクルクルと回りながら必ず巡っています。
この大きな地球の小さな世界で、君がそこに触れるのを待ち望んでいます。空に居た頃の記憶も含めて。

だから笑ってください。泣いてください。出会いも別れもしっかり見届けてください。
時には怒ったって叫んだりしてもいい。そうしたらもう一度君自身が君を正面から見つめてください。
鏡に向かって微笑んでください。語りかけてください。まずは、君が君を理解し、君が君と大事な友達になれれば、君は君として再び歩き出せます。
全ては、何度も繰り返されてきた命の中で、「君が生まれてきたわけ」を探す旅なのです。

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